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思考の深さを考えてみる [Essey]

 最近、多くの人が「外界からの情報刺激に対して、ただ単に感情的に反応するだけ」という状況をよく見かけます。

 ただ単に、ニュースを読むだけ、知るだけ、「腹立たしい」と反発するだけ、「へー、なるほど」と納得するだけ、の方がラクだからなのでしょう。

 本来「自分の頭で考える」ということは、なんでも鵜呑みにせず、すべてに対して疑ってかかり、必ず自ら検証し、他人とは違う「自分なりの見解」を導き出すことを言います。

 そこまでの「思考の深さ」がない場合、「浅はか」どころか、「何も考えていない」のと大差ないですね。

 哲学者ソクラテスは、真に「考える」のに必要な、すべての原点となる「無知の知」を根本的な考えとしました。

「自分自身が無知であることを知っている人間は、自分自身が無知であることを知らない人間より賢い。
 真の知への探求は、まず自分が無知であることを知ることから始まる。」というやつですね。

 また、数学という「考える」ための2大学問において大きな業績を挙げ、それらの基礎を築いたのが、フランスの哲学者・数学者であるルネ・デカルトです。

 幾何学の基礎を築き、哲学上の業績して有名なのが「方法的懐疑」ですね。

 デカルトは、ありとあらゆるものを疑ってかかり、最後に残った「疑いようのない」ものが、疑っている「自分自身の存在」でした。

 それを表現した有名な言葉が「我思う、故に我あり」ですね。

 真に「考える」ことの基礎には、必ず「疑うことを必要とする」を代表する表現と言えます。

 すべてを疑ってかかることが、なぜ重要なのかと言えば、「自分の頭で考える」ことの対極にあるのが「他人の意見にむやみに従う」ことだからです。

 「自分の頭で考える」とは、自分なりに他人と違う見解を見出すことです。

 さも当たり前と思っていた「周りの事象」に対して疑問を提示し、本当は「どうなのか?」と、自分自身の見解として導き出すには、すべてを疑うことからしか始めようがないからです。

 今そこにある情報は、どこの誰がなんの根拠を持って発信しているのか、その情報は本当なのか。

 「正しい」「間違い」といった意見は、ほとんどの場合、絶対的なものではなく「状況による」ものがほとんどです。

 ところが、多くの人は、自分が置かれている状況が、すべての人と同じであるという錯覚をもとに、反応しがちです。

 それでは、その当人や関係者にとっては「正しいこと」でも、状況が変われば「間違い」にも十分なりうるということになります。

 ある主張をしている人が「部分しか見ていないことに気づいていない」という「自分が無知であることを自覚していない状態」に陥っている状態です。

 このようなことが多く発生する原因は、世の中の大多数の人が信じている「常識やルール」は、環境の変化によって「間違いに変化する」ことが挙げられます。

 にもかかわらず、一度、大多数に正しいと思われた常識、子どもの頃から身につけた価値観などに、固執するわけです。

 自分の「無知」を認められず、過去の古い(今では、すでに間違っている)常識やルール、価値観を、いつまでも変えられないわけです。

 いわゆる「頭の固い」(あまり物事を考えずに、1つの考えに固執する)人たちの特徴として、自分の信じている価値観を、まったく疑わないことが挙げられます。

 これでは、柔軟な発想を阻害する諸悪の根源にしかなりません。

 このような状態から抜け出すにはまず、「そうか、自分が間違っていたのか」「自分は知らなかっただけなのか」「自分が理解できていなかったのか」と、自分自身の状態を疑ってかかることから始まります。

 クリエイティブな人やイノベーションを起こせる人材は、日頃から、接する情報に対して、自分なりに加工・応用し、発想や自分の行動を錬磨するべく、内的作業をする思考のクセを身につけています。

 それは「こうかもしれない」「こういうこともありうる」と、外側の世界を自分内部の思考の枠組みに引き寄せ、その中で理解し、新たに自分で創造しようという試みでもあります。

 ブレインストーミングやディベートなども、誰か他人がいなければできないわけではなく、自分ひとりでこの作業を繰り返せるのが、優秀なクリエイターやイノベーターです。

 自分の中に独力で場をつくり、その思考の場の中で、複数の違う自分を立ち上がらせながら、相互にディスカッションできる人材こそ、次々と問題解決策を思いつき、独創的なアイデアを紡いでいける思考法を身につけた人です。

「凡人が敷いたレールに、自分の思考を乗せないのが、優秀さの特徴である」
by スタンダール(フランスの小説家。本名:マリ=アンリ・ベール)

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