NHK「abc予想 証明物語」完全版 [Essey]
■ NHK BS『NHKスペシャル「数学者は宇宙をつなげるか」
abc予想証明をめぐる数奇な物語』<完全版>より
* 2022年4月15日(金) 23時から放送された番組。
2020年に「望月博士が、abc予想をついに証明」というニュースを聞いて以来、自分としては「待ちに待った」解説番組の登場です。
この番組を視聴してのメモと、インスパイアされながら自分なりに獲得できたものを含んだ記事となります。
※ 単に番組内容を「文字起こし」したものではありませんので、番組には存在しない内容を含みます。
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「abc予想」は、数論の歴史上「もっとも重要な難問」とされてきました。
例えば、350年間も解き明かされなかった「フェルマーの最終定理」が、abc予想が正しいとするなら、たった「数行」で証明できてしまうほどの破壊力を持つからです。
*フェルマーの最終定理:Xのn乗 + Yのn乗 = Zのn乗 となる自然数の組 (x, y, z) は存在しないという定理。
「abc予想」には、「足し算と掛け算を分離できる」という「革命的な力」が備わっていたためです。
これまで不可能だった「足し算と掛け算を分離」できれば、数々の「証明不能とされた難問」が「ドミノ倒し」のように一気に解決できてしまうのです。
数々の天才数学者たちが挑み、ずっと不可能だった「abc予想」の証明をついに、望月新一 京都大学数理解析研究所教授が成功し、2020年4月3日に発表しました。
この「証明」成功は、「重力の発見」や「微分積分の発明」にも匹敵する以上の「偉業」と言えます。
発表した論文のタイトルは「宇宙際タイヒミューラー理論」です。
すでに「査読」も完了し、専門誌に正式に論文が掲載され、証明は完了しています。
◆ あまりにも難解過ぎて、大多数には理解できない理論
証明は完了しているにもかかわらず、今だに「国際的な会議に出席するような世界的な数学者」の大多数が理解できていません。
ここでも、例外なく「2:6:2の法則」が適用されていて、「8割の数学者には理解できない」という状況が起きています。
*2:6:2の法則
「パレートの法則(上位2割の人が、全体利益の8割を生み出す)」の変形版で、仕事ができる人は全体の2割、並みの人が6割、低い人が2割という比率に必ず分かれる黄金比のこと。
世界的な数学者においても、「宇宙際タイヒミューラー理論」を理解できた人は「2割」のみだったのです。
これは例えば、初めは「地動説」を「誰も理解できなかった」のに似ています。
人が見ているとおり、「天」が動いているのであって、「地」は止まっているじゃないかと。
同じく「地球は球体」で、「太陽の周りを回っている」のだと。
これに対して「もし球体だったら、地球の横側や下方にいる人は落ちてしまうじゃないか」と。
どう見ても「地球は平面で、止まっていて、太陽が毎日動いている」じゃないかと。
◆ 望月博士とは
望月博士は、16歳で米プリンストン大学に入学し、19歳で博士課程へ進んだ、世界が認める天才です。
社交的な場には一切現れず、人付き合いはごく少数のみです。
おそらく、ほとんどの人とは話が合わないから、うっとうしいのでしょう。
それも「理解できない人たち」は、「何を考えているのかよくわからない、謎めいた人物」と言うようです。
望月博士のことを理解できる、ごく少数の人は「そりゃ彼にとって “くだらない会話” ほど苦痛なものはないから、当たり前でしょう」と。
◆ abc予想とは
1985年、ジョゼフ・オステルレ博士とデイヴィッド・マッサー博士により提起された数学的問題です。
「a+b=c」(例:2+3=5)が成り立つ自然数「a、b、c」において、積「abc」(例:2×3×5)の素因数に関する数論上の予想です。
「aのn乗」を因数分解した時に「同じ素数(例:2)」を何回使っているか、同じく「bのn乗」を因数分解した時に「同じ素数(例:3)」を何回使っているか、そしてその「2つのn乗」を足した時に「cのn乗」は「同じ素数を何回使っているか」を予想する数式です。
この時「cのn乗」は、「同じ素数を1回ずつ」または「cを2回」使うことになるというものです。
例えば「2+3=5」で計算すると、「n乗」の「n」にどんな数を入れても、確かに成立します。
しかし、この式が「あらゆる場合に成立するのか?」を世に問うたのです。
◆ 従来の数学の破壊へ
「ポアンカレ予想」で有名な数学者アンリ・ポアンカレは「数学とは異なるものを同じと見なす技術である」と語りました。
例えば、「りんご3つ」と「ロープ3本」は、「まったく異なるもの」だが、同じ「3つ」という概念を編み出しました。
さらに人類は、18世紀から19世にかけて、図形と数式という「まったく異なるもの」を「同じ面積・意味」と定義することに成功しました。
20世紀には、滑らかな「曲線」を「数値で表す」ことにも成功しました。
望月博士が、超難問「abc予想」を解き、数学的に証明するには、この既存の「数学」を根底から壊す「破壊的イノベーション」が必要だったのです。
望月博士は、学生時代に「理想とする人物像」として、ブログに「Noと言える人間」と書いていました。
他人とは「逆の発想」によって、それまでの「常識」を打ち破り、既存の「概念を破壊する」ことを目指していたのでしょう。
望月博士は2000年、楕円曲線の「ホッジ・アラケロフ理論」を構築した際に、abc予想が解けるかもしれないと考えたそうです。
そこで、望月博士が認める数少ない天才 加藤文元 博士(東京工業大学教授)と2人で、ついに「abc予想の証明」に取り組み始めました。
望月博士は、加藤博士に「abc予想を証明するには、普通の数学では無理で、まったく新しい数学を創り出さなければならない」と語っていました。
加藤博士によると、
「望月博士は、ポアンカレの逆を行こうとしたのです。
つまり「異なるものを、同じものと見なす」の逆で、「同じものを、異なるものと見なす」という新概念です。
その「2つが同時に成立しても良いのではないか」という新理論です。」
とのことです。
こうして望月博士は、「abc予想を証明する」ために、これまで人類世界になかった「まったく新しい数学」を創造してしまったのです。
◆ 「宇宙際タイヒミューラー理論」の難解さ
望月博士は、数学の世界を「2つ」用意し、「2つの世界が同時に成立する」という革命的新理論を構築しました。
例えば「1つ目= aの世界」は、普通の「掛け算が成立する」世界、「2つ目= bの世界」は、「aの世界」にある数字を「2乗した世界」とします。
この場合、「掛け算だけ」であれば「常に、aでもbでも成立する」のに、「足し算」だと「aでは成立するのに、bでは成立しない」宇宙となります。
つまり「掛け算だけが成立する世界」と「足し算が成立しない世界」が、「同時に2つ成立する」という新概念を打ち立てたのです。
こうすることで「掛け算と足し算」をついに分離し、掛け算と足し算が混在するからこそ難問だった「abc予想」を証明することに成功したのです。
この「破壊的新概念」は、既存の「従来の概念」に縛られる人々(8割)には理解できず、柔軟な思考で取り入れられる少数の人(2割)には理解されたのです。
◆ 最大の理解者、加藤博士の解説について
加藤博士
「宇宙際タイヒミューラー理論」を理解できるか、できないかは「対象に関する認識論」の問題だと思います。
わかりやすく例えるなら、我々は日常的に実は「異なるものを、同じものと見なす」と同時に、「同じものを、異なるものと見なす」ことをしているわけです。
*先の例「りんご3つ」と「ロープ3本」で言えば、同じ「3つ」という認識と「素材も形状もまったく違う」という認識、「同じと違う」が「同時に成立している」という認識を矛盾なくしているわけです。
これは「既存の現代数学」においても、実はすでに普通に使われているのです。
例えば「平面」を考える時、「X座標とY座標」という2つ数直線は、「数直線としては同じもの」であるのに、「X方向とY方向」の「別なもの」としています。
もし、2つ数直線を「同じ数直線」と「同一視」してしまったら、「1つの線」になってしまいます。
2本の数直線を「ここでは、同一視しない」からこそ、「平面」を表せるわけです。
我々はすでに、時と場合によって「同一視したり、しなかったり」をしているという「認識」の問題なのです。
今だに「理解できない」と言う数学者は、この認識・概念を「受け入れられるかどうか」なのかなと思います。
もし、もっと多くの人に理解してもらうのだとしたら、現今の数学との違いを完全に「言語化する」ための「新しい数学の言語体系」を生み出さないと難しいのかもしれません。
◆ 加藤博士の解説を聞いてインスパイアされたこと
単に「同じものと違うもの」が「同時に成立する」という概念なわけですが、なかなか理解できない「数学者」がいるのは悲しいことですよね。
従来の概念に縛られず、もっと思考を柔軟に、広い視野・高い視点で俯瞰すれば良いのにと思います。
「理解できない数学者」たちに、理解させるためには「数学ではなく、新しい言語まで生み出さないといけない」というのは馬鹿げた話ですね。
小数の「理解できた数学者たち」が、「理解できない数学者」のために、新たに「説明するための新言語体系まで構築する」という難題に取り組み始めたそうですが、これまたたいへんな難事業ですね。
「天動説」を信じ切っている人に、「地動説」を理解させるのが難事業であるのと同じように。
abc予想証明をめぐる数奇な物語』<完全版>より
* 2022年4月15日(金) 23時から放送された番組。
2020年に「望月博士が、abc予想をついに証明」というニュースを聞いて以来、自分としては「待ちに待った」解説番組の登場です。
この番組を視聴してのメモと、インスパイアされながら自分なりに獲得できたものを含んだ記事となります。
※ 単に番組内容を「文字起こし」したものではありませんので、番組には存在しない内容を含みます。
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「abc予想」は、数論の歴史上「もっとも重要な難問」とされてきました。
例えば、350年間も解き明かされなかった「フェルマーの最終定理」が、abc予想が正しいとするなら、たった「数行」で証明できてしまうほどの破壊力を持つからです。
*フェルマーの最終定理:Xのn乗 + Yのn乗 = Zのn乗 となる自然数の組 (x, y, z) は存在しないという定理。
「abc予想」には、「足し算と掛け算を分離できる」という「革命的な力」が備わっていたためです。
これまで不可能だった「足し算と掛け算を分離」できれば、数々の「証明不能とされた難問」が「ドミノ倒し」のように一気に解決できてしまうのです。
数々の天才数学者たちが挑み、ずっと不可能だった「abc予想」の証明をついに、望月新一 京都大学数理解析研究所教授が成功し、2020年4月3日に発表しました。
この「証明」成功は、「重力の発見」や「微分積分の発明」にも匹敵する以上の「偉業」と言えます。
発表した論文のタイトルは「宇宙際タイヒミューラー理論」です。
すでに「査読」も完了し、専門誌に正式に論文が掲載され、証明は完了しています。
◆ あまりにも難解過ぎて、大多数には理解できない理論
証明は完了しているにもかかわらず、今だに「国際的な会議に出席するような世界的な数学者」の大多数が理解できていません。
ここでも、例外なく「2:6:2の法則」が適用されていて、「8割の数学者には理解できない」という状況が起きています。
*2:6:2の法則
「パレートの法則(上位2割の人が、全体利益の8割を生み出す)」の変形版で、仕事ができる人は全体の2割、並みの人が6割、低い人が2割という比率に必ず分かれる黄金比のこと。
世界的な数学者においても、「宇宙際タイヒミューラー理論」を理解できた人は「2割」のみだったのです。
これは例えば、初めは「地動説」を「誰も理解できなかった」のに似ています。
人が見ているとおり、「天」が動いているのであって、「地」は止まっているじゃないかと。
同じく「地球は球体」で、「太陽の周りを回っている」のだと。
これに対して「もし球体だったら、地球の横側や下方にいる人は落ちてしまうじゃないか」と。
どう見ても「地球は平面で、止まっていて、太陽が毎日動いている」じゃないかと。
◆ 望月博士とは
望月博士は、16歳で米プリンストン大学に入学し、19歳で博士課程へ進んだ、世界が認める天才です。
社交的な場には一切現れず、人付き合いはごく少数のみです。
おそらく、ほとんどの人とは話が合わないから、うっとうしいのでしょう。
それも「理解できない人たち」は、「何を考えているのかよくわからない、謎めいた人物」と言うようです。
望月博士のことを理解できる、ごく少数の人は「そりゃ彼にとって “くだらない会話” ほど苦痛なものはないから、当たり前でしょう」と。
◆ abc予想とは
1985年、ジョゼフ・オステルレ博士とデイヴィッド・マッサー博士により提起された数学的問題です。
「a+b=c」(例:2+3=5)が成り立つ自然数「a、b、c」において、積「abc」(例:2×3×5)の素因数に関する数論上の予想です。
「aのn乗」を因数分解した時に「同じ素数(例:2)」を何回使っているか、同じく「bのn乗」を因数分解した時に「同じ素数(例:3)」を何回使っているか、そしてその「2つのn乗」を足した時に「cのn乗」は「同じ素数を何回使っているか」を予想する数式です。
この時「cのn乗」は、「同じ素数を1回ずつ」または「cを2回」使うことになるというものです。
例えば「2+3=5」で計算すると、「n乗」の「n」にどんな数を入れても、確かに成立します。
しかし、この式が「あらゆる場合に成立するのか?」を世に問うたのです。
◆ 従来の数学の破壊へ
「ポアンカレ予想」で有名な数学者アンリ・ポアンカレは「数学とは異なるものを同じと見なす技術である」と語りました。
例えば、「りんご3つ」と「ロープ3本」は、「まったく異なるもの」だが、同じ「3つ」という概念を編み出しました。
さらに人類は、18世紀から19世にかけて、図形と数式という「まったく異なるもの」を「同じ面積・意味」と定義することに成功しました。
20世紀には、滑らかな「曲線」を「数値で表す」ことにも成功しました。
望月博士が、超難問「abc予想」を解き、数学的に証明するには、この既存の「数学」を根底から壊す「破壊的イノベーション」が必要だったのです。
望月博士は、学生時代に「理想とする人物像」として、ブログに「Noと言える人間」と書いていました。
他人とは「逆の発想」によって、それまでの「常識」を打ち破り、既存の「概念を破壊する」ことを目指していたのでしょう。
望月博士は2000年、楕円曲線の「ホッジ・アラケロフ理論」を構築した際に、abc予想が解けるかもしれないと考えたそうです。
そこで、望月博士が認める数少ない天才 加藤文元 博士(東京工業大学教授)と2人で、ついに「abc予想の証明」に取り組み始めました。
望月博士は、加藤博士に「abc予想を証明するには、普通の数学では無理で、まったく新しい数学を創り出さなければならない」と語っていました。
加藤博士によると、
「望月博士は、ポアンカレの逆を行こうとしたのです。
つまり「異なるものを、同じものと見なす」の逆で、「同じものを、異なるものと見なす」という新概念です。
その「2つが同時に成立しても良いのではないか」という新理論です。」
とのことです。
こうして望月博士は、「abc予想を証明する」ために、これまで人類世界になかった「まったく新しい数学」を創造してしまったのです。
◆ 「宇宙際タイヒミューラー理論」の難解さ
望月博士は、数学の世界を「2つ」用意し、「2つの世界が同時に成立する」という革命的新理論を構築しました。
例えば「1つ目= aの世界」は、普通の「掛け算が成立する」世界、「2つ目= bの世界」は、「aの世界」にある数字を「2乗した世界」とします。
この場合、「掛け算だけ」であれば「常に、aでもbでも成立する」のに、「足し算」だと「aでは成立するのに、bでは成立しない」宇宙となります。
つまり「掛け算だけが成立する世界」と「足し算が成立しない世界」が、「同時に2つ成立する」という新概念を打ち立てたのです。
こうすることで「掛け算と足し算」をついに分離し、掛け算と足し算が混在するからこそ難問だった「abc予想」を証明することに成功したのです。
この「破壊的新概念」は、既存の「従来の概念」に縛られる人々(8割)には理解できず、柔軟な思考で取り入れられる少数の人(2割)には理解されたのです。
◆ 最大の理解者、加藤博士の解説について
加藤博士
「宇宙際タイヒミューラー理論」を理解できるか、できないかは「対象に関する認識論」の問題だと思います。
わかりやすく例えるなら、我々は日常的に実は「異なるものを、同じものと見なす」と同時に、「同じものを、異なるものと見なす」ことをしているわけです。
*先の例「りんご3つ」と「ロープ3本」で言えば、同じ「3つ」という認識と「素材も形状もまったく違う」という認識、「同じと違う」が「同時に成立している」という認識を矛盾なくしているわけです。
これは「既存の現代数学」においても、実はすでに普通に使われているのです。
例えば「平面」を考える時、「X座標とY座標」という2つ数直線は、「数直線としては同じもの」であるのに、「X方向とY方向」の「別なもの」としています。
もし、2つ数直線を「同じ数直線」と「同一視」してしまったら、「1つの線」になってしまいます。
2本の数直線を「ここでは、同一視しない」からこそ、「平面」を表せるわけです。
我々はすでに、時と場合によって「同一視したり、しなかったり」をしているという「認識」の問題なのです。
今だに「理解できない」と言う数学者は、この認識・概念を「受け入れられるかどうか」なのかなと思います。
もし、もっと多くの人に理解してもらうのだとしたら、現今の数学との違いを完全に「言語化する」ための「新しい数学の言語体系」を生み出さないと難しいのかもしれません。
◆ 加藤博士の解説を聞いてインスパイアされたこと
単に「同じものと違うもの」が「同時に成立する」という概念なわけですが、なかなか理解できない「数学者」がいるのは悲しいことですよね。
従来の概念に縛られず、もっと思考を柔軟に、広い視野・高い視点で俯瞰すれば良いのにと思います。
「理解できない数学者」たちに、理解させるためには「数学ではなく、新しい言語まで生み出さないといけない」というのは馬鹿げた話ですね。
小数の「理解できた数学者たち」が、「理解できない数学者」のために、新たに「説明するための新言語体系まで構築する」という難題に取り組み始めたそうですが、これまたたいへんな難事業ですね。
「天動説」を信じ切っている人に、「地動説」を理解させるのが難事業であるのと同じように。
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