Adwardsの高騰するクリック単価 [Google考察]
第4回
アドワーズの有効性が実証され、短期間のうちに売上げを3倍にもする企業が現れ、なんとアドワーズ広告を出現させるキーワードの争奪戦が始まった。
例えば食器メーカーは、「cup」というキーワードで検索が実行されたときに自社の広告を出し、コーヒーカップなどのカタログ掲載ページに誘導して、購入機会を増やしたいと思うはず。
でも、食器メーカーやコーヒーカップを販売している企業は1社じゃないから、アドワーズ契約をしている企業がいっせいに、そのキーワードに対して広告を出したいと申し込み、広告希望が集中すると。
とはいえ、検索結果表示ページ(広告エリア)にも、スペースの限界があるから、それを上回る広告希望があれば、すべての企業を掲載しきれない。
そんなことから、よく検索に使用されるキーワード、広告掲載が殺到するキーワードは、オークション制になって、より高額な条件を提示した企業の広告を優先的に表示する方式になっていったと。
そういう重要キーワードの争奪戦が日夜繰り広げられた結果、キーワードによっては、たった1回のクリックごとに5000円を広告料として支払うという高騰ぶり。
ってことは、1週間で400回のクリックがあるとしたら、広告料は200万円になって、毎週Googleに200万円を払い続けることになる。
もしそういうキーワードが1000種類あるとしたら、それだけでGoogleは毎週20億円の売上げとなり、年間だと1000億円を超えることになる。
もし2000種類あったとしたら、年間2000億円超ということになって...。
[Google年間売上1兆円規模の秘密]
1クリックごとに5000円という以外にも、1クリックあたり2000円~3000円というキーワードも相当数あるだろうし、1000円以下のキーワードであっても、全世界の人が検索するキーワードの数は、途方もない数でしょう。
こんなふうに具体的な数字的に置き換えてみると、Googleが年間売上9000億円を超えるのは、ごく自然のことのように思えてきて。
[完全無欠なビジネスモデル]
恐ろしいのは、そんな高額な広告料をGoogleに支払っても、この革命的な「アドワーズ」広告においては、なお余りある利益が上がってしまうってこと。
その広告料に見合う、それ以上の効果がアドワーズにあるからこそ、実際に、広告を出稿した企業の売上(利益)が倍増、3倍増となるからこそ、高額なキーワードであろうともアドワースに殺到する。
当然Googleの技術をもってすれば、各検索キーワードに対する「広告表示回数」「クリック回数」「申込件数」「販売実績」を一覧表示して顧客に提示し、広告効果を確認してもうことなど簡単なことで。
広告を出す側の企業にとっても、Googleへ支払う広告料に対する利益が確認できる(費用対効果)ってことは、めちゃくちゃ割のいい、確実に利益が見込める、ゼロリスク-ハイリターンの投資に過ぎないのだと。
アドワーズこそまさしく、Win-Win(両方勝者、勝者しかいない)の、完全無欠なビジネスモデルなのであった。
アドワーズ広告を考える [Google考察]
第3回
2000年10月に開始したアドワーズ広告(Google Adwords)ってのが、また画期的な発想のシステムで。これがGoogleの収入を加速度的に増していった原動力でしょう。
ユーザが検索したキーワードに合致する広告を、検索結果と一緒に(ついでに)表示しちゃおうというもの。
確かに「おいしいお菓子」と入力して検索した人が求める情報は、レシピを知ろうとしているか、買って食べたいと思っているか、食べに行こうとしている人なわけで、そこにレシピ集の料理本、インターネットショップ、お菓子店のリンクが出れば、ちょっとクリックしてみようというもの。
そのことだけを見れば、ずいぶん単純で簡単なことのようだけど、実はこれはとてつもないことだった。
もしかすると、これを始めた時点では、当の本人たちでさえ、とりあえずGoogleの検索サイト内に何かを加えて、少しでも広告収入が欲しいよねっていうぐらいの軽い気持ちだったのかもしれない。
でも結果的に、このシステムはアメーバのように全世界に増殖して「Google革命」を引き起こし、年間売上げ1兆円規模の収入を上げていくことに...。
[アドワーズに隠された革命的コンセプト]
誰が訳したのか「検索連動型広告」なんて、よくわからない変な日本語訳になってるからわかりづらかったけど、このコンセプトは深く考えれば考えるほど、本当に凄い。
これまでの広告の概念や手法を完全に破壊し、まったく新しく作り上げてしまったというぐらい凄い。
それまでの広告というのは、検索サイトのトップページによくあるバナー広告のように、アクセス数の多い(ページビューの高い)場所を、広告スペースとして販売する方式。
単なるスペース売りに過ぎないから、アクセス者によっては、まったく興味のない広告が表示されているだけであって、そういう人に対してはほとんど効果がない。
でも今までの広告はそれがすべてだった。新聞も雑誌もラジオもテレビも、媒体がどんなに変化していっても、結局は場所売り。
だから雑誌の広告ページは読み飛ばすし、CMが始まればチャンネル変えるし、番組を録画するときにはCM部分をカットするし、録画されていても早送りする。
読む人、見る人の興味とはまったく関係なく、とにかく人目につけば良いというのがそれまでの広告。
大勢の中には、興味を持つ人も入るだろうと。あるいは、多く目にすることで、刷り込み効果を期待すると。
ところがアドワーズは、ある情報を探そうと検索サイトに来て、その人自身が勝手に書き込んでくれる検索用語をキーに、まさにその人が探しているものに対して「こういうのもありまっせ」と情報提供する。
そう、「情報提供」であって、これまでの「広告」という概念とはまったく違う! 驚異的に違う。
[アドワーズが発想されるまでの過程を自分なりに推測すると]
(1)サイトの広告スペースは面積的に限られ、掲載数はたいして増やせないし、掲載料金を上げるにも限度がある。
(2)そうなると、広告を頻繁に書き換えて、掲載数を増やすしかないが、例えば、どうせ検索が行われるごとに検索結果表示でページを書き換えてるわけだから、このときに一緒に広告を書き換えてしまえばいいじゃないか。
(3)といっても、クライアント側としては、なるべく多くの人に見てもらうために、1週間ずっと掲載して欲しいといった要求をせざるを得ない。
(4)では、より多数の広告を掲載できて、しかも広告を頻繁に書き換えても文句を言われない方法はないだろうか。
(5)ひとつの解決策として、検索キーワードに関連する広告をその都度出すということなら、その都度広告を書き換えられるし、クライアント側に説明する際にも、勝手に書き換えるわけではなく、検索キーワードに関連していれば、よりターゲットに近い人に見てもらえるので、無作為に広告出すよりは効率的と説明できないか。
(6)初めのうちはクライアント側も半信半疑で、あまり広告料を出してくれないかもしれないけど、今後広告収入を少しでも増やしていくには、これしかないだろうと。
ってな感じではなかったかと。
この発想の過程は、あくまで「広告による収入増」という観点に過ぎないけど、実はその内部に「広告」という範囲を逸脱し、打ち破り、爆発させる効果を内包してた。
なぜなら、誰でも「広告」なら見たくないけど、「なんかいい情報なら知りたい」わけで、「広告」と「知りたい、探したい情報」はまったく違う。圧倒的に違う。
探している情報に対して、ピンポイントで、付加価値的に、検索"ついで"に追加表示される情報。
買おうと思っていなかったとしても、こんなに安く売っているならいいなとついクリックしてみたくなる。しかもそのリンクしたサイト先で、そのまま購入手続もできてしまう。
これこそ、Googleをここまで急成長させた、まったく新しい情報提供サービス。
事業者が消費者にアプローチする上で、現在もっとも効果的な購買誘導システム。
これまでの「広告」という概念を破壊し、スペースの限界を突破した革命的なビジネスモデル。それがアドワーズ。
Googleの設立過程 [Google考察]
第2回
大学のネットワークではもたないほどのアクセス数になって、会社として独立する必要に迫られた1998年、噂を聞きつけたSun Microsystemsの共同設立者であるアンディ・ベクトルシェイムと面会し、Googleを実際に操作した一度のプレゼンで10万ドルの小切手を得た。
(こういうプレゼンって、すっごく緊張するだろうけどめっちゃ楽しそう。気合い入ったろうなァ。パッと一度見ただけで、これはいけるって判断できるアンディってのも、たいした人だね。)
この10万ドル(約1200万円)を元手に、1998年9月7日、2人でGoogle社を共同設立し、当時Intelに務めていたスーザン・ウォジスキ*のガレージを借りて創業を開始。
*ウォジスキは現在、Googleのプロダクトマーケティング担当副社長。
(Googleも最初はやっぱり、いかにもアメリカ的なガレージカンパニーだったのね。ガレージを貸してあげた人、見る目あるなァ...。)
1998年12月にあらためてGoogle検索サービスをスタートし、ちょうどその頃のアメリカはネットバブル全盛期で、翌年の1999年、クライナー・パーキンスとセコイアから総額1億ドルの投資を受け、早くも快進撃がスタート。
検索頻度を表す「クエリ」がその後驚異的な伸びを示し、1999年2月に50万クエリ、同年6月に300万クエリと加速度的に検索ユーザ数を伸ばし、2000年7月の米Yahoo!社と提携によって、世界的にも知名度アップ。
(たとえYahoo!と提携しても、あのシンプルなGoogleの検索サイトをそのままずっと継続していくとこも、経営センスとしてさすが。)
2000年末にはついに1億クエリを超え、Googleサイト自体が、Yahoo!に並ぶ検索エンジン最大手に躍り出た。(2つのサイトを合計すれば、倍の2億クエリ超ということ。)
それから3年余りで、日本国内においてもNECの「BIGLOBE」、ヤフーの「Yahoo! JAPAN」、エキサイトの「Excite」、NTT-Xの「goo」の検索エンジンとしてGoogleが採用され、圧倒的なシェアをさらに拡大していく。
[検索結果表示順位競争スタート]
このあたりから、Googleの爆走に引きずられるように、いかにして検索結果の表示を上位に持っていくかという競争が始まった。
いわゆるSEO(Search Engine Optimization)対策というやつ。
検索エンジンの自動判定に対して、いかに価値あるサイトであるか、いかにマッチングしたサイトであるかという評価を上げようという。
自分のサイトの売り(セールスポイント)、誘導したい(目標とする)検索キーワードで検索された時の順位を上げることで、自分のサイトにいち早く誘導しようという競争。
営業目的ではないサイトなら、趣味とか自分の興味でやっているなら、多少アクセス数が伸びなくても、同じ趣味や興味を共有できる人さえ来てくれればよくても、アクセス数がビジネスに直結するサイトだとそうはいかないと。
やたら外部からのリンクを増やして「Page Rank」をあげようとか、自分のWebページ内にヒットして欲しい検索キーワードをやたら書き込んで、そのキーワードで検索されたときのマッチング性を高めようとか。
今もやっている人たちがいて、それをビジネスにしてるというあさましさ...。
Googleの起動 [Google考察]
第1回
まずは順当に「Googleが起動した」ところから始めてみようかと。
1995年、米スタンフォード大学院生だったLarry Page(ラリー・ペイジ)とSergey Brin(サーゲイ・ブリン)が、自分たちの研究プロジェクトとしてGoogleの研究開発をスタート。
大学内の研究室に安価なPCを何台か用意し、いわゆる「Page Rank」という概念に基づいて、google.stanford.eduというURLのWeb検索サイトを立ち上げた。
といっても、当時すでにWeb検索サイトはたくさんあって、どちらかというとGoogleはかなりの後発であって、Web検索サービスを提供すること自体に目新しさはなかった。
1995年当時の代表的な検索サイトとしては、AltaVista、Yahoo!、Excite、Ultra、HotBot、Infoseek、Lycos、Magellanなどがあって、日本産だとInfoNavigator(富士通が1995年9月開始)、NTT DIRECTORY(NTTの検索サイト)といった、全文検索エンジンの開発=検索サービスの提供という状況だった。
ところが、当時のWeb検索は、単純にキーワードにヒットしたサイトをヒットした順に表示するようなものだったので、いわゆる「ゴミサイト」が大量にヒットしたり、本当に読みたいサイト、知りたい情報を探すのに時間がかかり、手間取ってた。(延々と検索結果を見ていくのがしんどい。)
手動のディレクトリ型検索サイトにしても、結局人海戦術なんで、登録や更新が遅れがちだったり、自分が調べようとするカテゴリーを見つけるのも面倒でもあり...。
そこでGoogleの2人は、これを解決する方法として、検索しようとするサイトの価値、重要性を客観的に評価し、より人々が求める情報を発信しているサイトから順に検索結果を表示するっていう手法を発想したと。
このサイト評価の方法として、「Page Rank」という概念によって個々のWebサイトごとに、あるルール(Googleのキモなので公表していない)によって、その価値、重要性を自動的に判定すると。
さらに、検索されたキーワードに対して、よりマッチする内容が書かれていると思われるサイトから順に表示するという手法を編み出した。やるね!
「Page Rank」の概念では、評価の高いサイトは、より多くのWebサイトからリンクされているだろうと。検索ボックスに入力されたキーワードと同じキーワードがより多く出現するサイトがマッチング性*が高いだろうと。
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*マッチング性:ここでいうマッチング性とは、そのキーワードに対して一語しか記述されていないサイトより、頻繁にそのワードが出てくる方が、そのキーワードに関してより詳しく記述されているだろうという考え方。
この概念に基づくアルゴリズムによって、飛躍的に表示順位のクオリティが向上し、高品質な検索サイトとして、口コミで広まっていき、大学のネットワークがダウンするほどの人気を集めるようになったと。
(そりゃそうだ。良いもの、便利なものに人々は集まるもの...。)
Googleを考える [Google考察]
Introduction
単なる無償検索サービスのひとつであったGoogleが、なぜたった9年で、年間売上1兆円規模の事業者に急成長できたのか? という不思議。
Googleが生み出した革新的なビジネスモデルってどんなもの? というのを知りたい欲求。
巨大企業となったGoogleは、その資金力でいったい何をしようとしているのか? という興味。
Googleはこれからどこへ向かおうとしているのか? という好奇心。
そんなことから、Googleを徹底的に(できうる限り)考察してみようってなカテゴリーの連載です。
Googleの戦略 [Google考察]
いよいよGoogleの野望が、形になって表れてきた感じがします。
まずは、Web上でExcelを再現する表計算ソフト「Google Spreadsheets」。
Gmailのアカウントを作って試してみた(画面)ところ、まだ開発中という感じだったけど、これからの進化を予感させる仕上がりで。
もうまもなく、Word風の文書作成(その文書を最大50人で共有可能)、ブログへの投稿、RSSが生成ができる「Writely」も、リリースされるとのこと。
恐るべきAJAXですね。今は「Google Map」が、AJAXの代名詞のようになってるけど、これからは Google「Spreadsheets」「Writely」になっていくのでしょう。
自分のサイトは、「Google Page Creator」で作れるようになるし、公開したページはGoogleのWeb検索ロボットのクロール対象となって、公開後数時間内でGoogle検索の結果に反映されることになると。
もしかすると、テキストや画像をきれいに配置して、サイトへのアップと、プリントすれば、PowerPointの代わりになっちゃうのかも。
あとびっくりなのが、Gmail(Googleの無料メールサービス)の容量は、なんと2.5GB!
Googleサイトの説明文に「メールの削除は不要です。」だって。(確かに、2.5GBを一杯にするメールなんて、ちょっと想像つかない。)
それを見て、マイクロソフトのMSN Hotmail は 250MB→2GB、Yahoo!メールは500MB→2GBにあわてて変更と。
ますますマイクロソフトは、やばい感じになってきましたね。
OSは、個人PC向けの「デスクトップLinux」が浸透していく気配で、ブラウザはFirefoxと。(Firefox2のベータ版配布スタート。)
頼みのMS-Officeも、Linuxで動作する「StarSuite」や「Googleアプリ」に代替されちゃうと。
何年か後には、「そういえば、マイクロソフトって、今何やってるんだろうね。」という会話が交わされることになりそうな気配。
Googleは、ブラウザでのオンラインアプリにとどまらず、無料ダウンロードアプリもどんどん開発していくもよう。
画像表示ソフトの「Picasa2」も、動きが軽くてスムーズで、かなり気に入ってます。
やっぱり、マイクロソフトとは、開発力(プログラムのクオリティ)が違うなァって感じで。
ついでに、Googleデスクトップもインストールしてみましたが、これもなかなかのもの。
さっそく、Yahooが真似して、Yahooデスクトップ(ウィジェット)ってのをリリースしてますが...。
発想力、アイデア勝負でも、どこもGoogleにはかなわないって感じ。
このまま順調に行くと、PCを起動してから終了するまで、常にGoogleサイトにつなぎっぱなしで、あらゆることが無料で、Googleのサーバ内で完結してしまいそう。
今から5年後のGoogleは、全世界から圧倒的なユーザ数を獲得し、そのシェアは、かつてのマイクロソフトのように80%を超えていることでしょう。
その広告費用だけで、とてつもない利益を上げているのでしょう。
さらに10年後には、インターネットにさえつながれば、Googleサイトでなんでもできちゃって、PCという形態もなくなっているかも。
携帯端末で、いつでも、どこでも、移動中でも、とにかくGoogleサイトに接続さえできればいいと。
アプリケーションの動作もデータの処理も、作成したデータの保存も、すべてGoogleのサーバで済んでしまうから、端末にたいしたスペックは必要なく、インテルの出番もサーバぐらいになるのでしょう。
そうなると、インテルという巨人も、すっかり小さくなって、普通サイズの企業になってるかも。
全世界の人をGoogle会員にし、あらゆる作業がGoogleサイトで完結してしまうという時代を作り出すことが、Googleの基本戦略なのでしょうね。