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Googleの必殺Webブラウザ:Chrome [Google考察]

■速度が利益を生む

 Googleという企業にとって、高速なWeb処理を行うこと自体が、莫大な利益を上げるしくみになってたんですね。

 検索結果のロード時間がわずかでも短くすることで、ユーザの検索回数が増え、検索連動型広告の表示回数が増加し、Web広告利益を上げる機会が全世界マーケットで増えていくという。

 ブラウザが高速化すれば、Googleが開発しているWebプリケーションも高速に動くことになって、Googleの電子メール、文書作成、表計算、カレンダといったオンラインアプリケーションの魅力が増し、より多くの機能を搭載することもできると。

 Chromeなどの高速なブラウザの登場によって、Googleの現在の事業3本柱、「検索」「広告」「アプリケーション」が、3つとも追い風になってくれるという見事なしくみ。

■Chromeの特長

 Chromeは、Web利用をより簡単に、より速く、余分なもので表示領域を狭めない、というGoogleらしいコンセプトのスマートで革新的なデザイン。

 これまでのブラウザのデザインを革新、ほとんどのメニューやツールバーアイコンを排除。
 省スペース化のために、「Webアドレスを入力するアドレスバー」「検索キーワードを入力する検索ボックス」を統合した「Omnibox」は、Webページのロード進行状況がどのくらい進んだかを示すプログレスバーまで兼用。

 とにかく何でもこのOmniboxに入力して、Enterキーを押せばよく、これ以上のシンプルさはないでしょう。
 よくアクセスするサイトの名前の最初の1~2文字を入力しただけで、候補がリスト表示され、それまでの閲覧履歴やGoogleの人気サイトランキングを基にしたお勧めの候補によって精度もかなり高くて。

 さらにOmniboxのおもしろい機能は、Amazon.comなど、独自の検索機能を持つサイトの名前を入力した場合に、Omniboxでタブキーを押せばそのサイトの中を検索できて、そのサイトをまず開くという必要がないと。この機能は「Tab-to-Search」というもの。

 タブの処理方法も革新的で、それぞれのタブが別のブラウザとして動作するので、タブごと枠の外にドラッグするだけで、新しいウインドウに切り替わるし、独立してるんで、スタックしたタブだけ閉じられると。

 現在表示中のページにあるリンクから新規のタブを開くと、すぐ右隣のタブに並ぶので、ほかのブラウザのように一番うしろのタブまでいく必要がないというのも合理的な仕様で。

 要望があるとすれば、ブックマーク管理がないぐらいかな。とはいえ、開発者向けリリース版にはすでに追加されたそうなので、それもまもなく解決されそうですけど。

■Googleの記者発表会見

 Chromeの記者発表の席上、Googleの共同設立者であるSergey Brin氏は、「人々がインターネットをたくさん利用し、さらに素早く簡単に利用できるようになれば、Googleの事業は伸び続ける。」とコメント。
 さらに、「たとえChromeが競合ブラウザの開発者の競争心をあおる以外の影響を及ぼさなかったとしても、Googleにはメリットがある。Chromeの発表により、Internet Explorer 9 がずっと高速化されれば、Googleにとっては成功と見なされる。」と言い添えた。
 ライバル会社の製品能力向上まで自社の利益として取り込んでしまうという、まさしくGoogleならではの戦略。

 米Googleのエンジニアリングディレクタ、ライナス・アプソン氏は、テレビ会議を通じて次のように発表。
 Goolgeが独自に実施したレンダリングパフォーマンスの比較では、ローカル上に保存した複数サイトのWebページを連続表示させた結果は、
 Internet Explorer 7 : 257ミリ秒
 Firefox 3       : 158ミリ秒
 Google Chrome   : 68ミリ秒
であったと。

 アプソン氏は、「オープンソースのWebブラウザとしてはMozillaのFirefoxなどが存在するが、Google Chromeをオープンソースとして展開するのは、競争環境がWebの世界にとって最良だと判断したからだ。我々もFirefoxへ積極的に関与しているが、社内では“オープンなWeb世界をさらに広げるには競争しなければならない。”という意見が強く存在していた。」と。

 Mozillaとの関係を質問されると、「彼らの活動を尊重しており、これまでの関係が変わることはない。セーフティブラウジングの技術や共有しているソースコードも多く、今後もより良い関係を築いていけるだろう。」と答えた。

「Googleはいつも信じている。私たちがベストプロダクトを出し続ければ、必ずやそれは成功し、何百万人ものユーザーにお使いいただけるだろう。」 と続けた。

■Chrome高速化の基盤技術

 Google高速化の基盤技術となっているのは、Appleの「Safari」でも使われているオ―プンソースの「WebKit」プロジェクトと、JavaScript実行を高速化する「V8プロジェクト」。

 WebKitは、Webブラウザのスクリーンエンジンで、Webページをレンダリングするもの。
 WebKitの採用理由について、アプソン氏は次のように答えている。
「Safariでの採用実績に加え、描画処理性能の素晴らしさをわれわれも重視した。WebKitプロジェクトには、特に“セーフティブラウジング”(クラッシュなどの影響を最小限に抑えるなど)の部分で積極的にかかわってきた経緯もあり、Google ChromeではWebKitの成果を活用した。WebKitを採用することで、Web開発者がGoogle Chrome用に新たな開発を行わずに済むよう配慮した。」

 「V8」は、デンマークを拠点に活動しているJava VM 開発のエキスパート、ラーズ・パーク氏のチームが20年近く蓄積したノウハウを反映させて実現したもの。
 既存のJavaScriptで作成されたプログラム処理性能を何倍にも高速化することに注力し、今後のWeb世界での標準になることを目指している。
 JavaScript は今や、「Ajax」と呼ばれるテクノロジを使うリッチWebアプリケーションの基盤となるテクノロジに成長してて。

■国際Web標準への準拠度

 ブラウザがWeb標準に準拠しているかを調べるためのAcidテストでは、Chromeが100点満点中78点に対し、Firefox 3 は71点、IE7 は14点であったとのこと。

 つまり、国際Web標準準拠して作られたWebサイトを、IE7 で表示すると、不具合が起こる可能性が高く、ChromeやFirefoxでは、ほぼ問題なく表示されるということを意味してて。

 Webサイト制作者としては、Chrome、Firefox、Safariがもっと普及してくれることで、より国際Web標準に準拠したサイトづくりが行えることになると。

 IEユーザが減ってくれるほど、Web標準のサイトが増えていくということになるという...。
 あるいは、Microsoftという会社が、もうちょっと「社会に対する協調性」を持ってくれれば、変則的なWebサイトを作らせられる必要もないのだけれど...。

■Googleの今後の戦略

 Google関係者の発言より

「Googleはすでに、Mozillaにとって大きな支援者であり提携相手だった。単によりよいブラウザを求めていただけなら、Googleはただ単に「Firefox」への投資を追加するだけでよかったはずだ。」

「Chromeは、Webページを閲覧するための手段であると同時に、Webアプリケーション向けのプラットフォームでもある。」

「我々が本当に必要としていたのは、ブラウザだけではない。ウェブWebページやアプリケーションのための現代的なプラットフォームも必要としていた。こうしたものを構築するため、われわれは取り組みに着手したのだ。」

 これらの発言から、Googleは、今後の展開をどう考えていると予測されるでしょう。
 今のところ、Chromeを実行するにはWindowsが必要(Mac版とLinux版は近日中にリリースされる予定)だが、そう遠くない将来、LinuxベースのChrome搭載マシンや数多くのChrome用アプリケーションが登場することは確実でしょう。
 そう考えるとChromeは、Windows離れを決定的にするキラーアプリケーションになるかもしれません。

 そして、携帯端末のためのオープンな総合プラットフォーム「Android(アンドロイド)」にも実装することで、OSを必要としない(OSまで組み込んだ)ブラウザへと進化していくのでしょう。


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