Googleのエクスパンド [Google考察]
第7回
検索サービスNo.1を確立し、アドワーズ&アドセンスで莫大な収益を上げたGoogle。でもそこで立ち止まらないのがGoogle。
2002年4月にWeb API(Application Programming Interface)を発表、アプリケーション方向への進出を感じさせる。
Google マップを発表したのが2005年7月。今度は、Googleをアプリケーション・サービス・プロバイダ(ASP)に拡張(エクスパンド)しようというもの。
検索サービスだけじゃなく、ソフトウエアの開発・制作もしようと。しかもWebで提供しようと。パッケージソフトじゃないところがGoogle。
インターネットに接続されたWebブラウザ上で動く"動的ソフトウエア"、しかも"高度(高性能)なソフトウエア"への挑戦。
このWeb ASP構想も、それまでのソフトウエア業界の発想の限界を打ち破るものだった。今日のインターネット常時接続・高速回線という環境が利用できるとたとえわかっていても、手を出せるところはほとんどなくって。
なぜなら、Webブラウザ自体が無償ソフトで、アプリケーションとしての完成度が低くくても文句の言いようがないし、開発メーカによって仕様は異なるし、バグも少なくないぞと。
そんなWebブラウザの中で動くことを前提にしたソフトなんて開発できないよと。
もしソフトの使用中に障害が起きたり、ハングアップした場合、ブラウザ側の問題なのか、ソフトの障害なのかもわかりづらいし、修正対応も困難で。
手を出すとしても、障害の起こりにくい単純・単機能なソフトがせいぜいで、高度なソフトなんて無理じゃない?! みたいな。
ところがGoogleには、そんなことは問題ですらなかった。なぜならアプリまでも無償提供してしまえる経営判断能力、世界中から入社希望が殺到する選りすぐりの天才エンジニアたちの開発力。
[無償Webアプリケーションの提供]
これまでの「ソフトウエアの開発費は販売して回収する」という概念を破壊し、「ソフトウエアに広告を組み込んで無償提供」という発想も打ち破り、誰も考えつかなかった新たな「第3の回収」を構想できる発想力と判断力。
このエクスパンドのしかた、Web ASP構想を実際に実現してしまえる企業は、世界中にGoogle以外ないでしょう。
Google Mapsを実際に見るまでは、ほとんどの人があんなことができるなんて夢にも思ってなくて。
"いい加減な"ブラウザの中で、"動的に"マウス操作できるなんて。Ajax(Asynchronous JavaScript + XML:エイシンクロナス(非同期)のジャバスクリプトとXML)なんてもので、こんな凄いことを実現してしまうなんて。
JavaScriptのHTTP非同期通信機能を利用してブラウザ内の一部分に、ユーザの操作や画面描画にあわせて、指定したURLからXMLドキュメントを読み込ませ、ダイナミックHTMLで動的に書き換えると言われても。
非同期通信によってページ単位での読み込みを行わないから、ネットワークを通じたデータ受信を感じさせないシームレスなWebアプリケーションの開発が可能...って言うのは簡単だけど、本当にそんなもの実現できるのかと。
[Googleが考えるPriority]
Google Mapsで、マウスのドラッグ操作に、縦横無尽に画面が展開していく感動。ぎこちなさの一切ない、圧倒的な完成度。
このソフト1つで十分、中堅会社1社がやっていけそうな商品力。
この完成度なら、無償で提供することを躊躇しそうなものだけど、Google経営陣が考えているプライオリティ(優先度)は、そんなとこにはなく。
たぶんこんなことなのかなと。
(1)いかにGoogleを圧倒的な存在感の企業にするか、いかにどれだけのユーザ数を全世界に獲得できるかこそがもっとも重要なんだと。
(2)世界規模の圧倒的なユーザ数を獲得することこそが、次なるビジネスアプローチを圧倒的優位に展開できるかと。
(3)グローバルコンペティション時代(国際大競争時代)の今日、世界的な、圧倒的なシェアがもたらすビジネス規模は計り知れないと。
その思惑どおり、Googleの登録会員数は、全世界に爆発的な勢いで増加し続け、圧倒的なマーケットシェア、莫大な市場規模をもたらした。
[止まらないソフト開発]
それでもなお止まらないのがGoogle。
今度は、Web ベースの表計算アプリケーション「Google Spreadsheets」を発表。
これも実際に見るまで、Excelに匹敵しそうな表計算ソフトをWebで実現できちゃうなんて、誰も思ってなかったでしょう。
ついでに、Webベース ワードプロセッサの開発会社 Upstartle を買収し、Wordに匹敵しそうな「Writely」を発表。
Writely と Google Spreadsheets を統合して「GoogleDocs&Spreadsheets」の提供スタート。
無償サービスとは思えない、Gmailの巨大容量(2GB)により、データの作成/共有/管理まで、すべてGoogleのWebサーバ内でどうぞと。
もはやインターネットにさえつながれば、Googleアカウントにさえログインすれば、それですべて済んでしまうと。
これぞGoogle経営戦略の真骨頂。
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